Exotic Perks
氷河の守り
Stats
防御力 | 0 |
Curated Roll
Lore
氷瀑のマントル
氷は山を削って塵にすることができる。これさえあれば実現できるだろう。
「緊急、最優先事項」とフラグ付けされたメッセージには7つも誤字がある。用心深く思慮深い男にしては珍しい。
確かに緊急性はあるのだろうが、メッセージの激しさとは反してパニックになるほどの事態ではないと彼は考えた。他の者を慌ただしくさせたり、己の怒りと恐怖心をあらわにする必要はない。合理的な対話ができるはずだ、と彼は納得した。これは全て誤解なのだと。
試験ユニットC-21へと続く寂れた廊下を急ぐが、決して走ろうとはしない。ホログラムの警報が静かに、繰り返し点灯する。「危険! 関係者以外立ち入り禁止! 危険! 関係者以外立ち入り禁止! 危険! 関係者以外立ち入り禁止…」
彼は通信で呼びかけようとし、伝送に問題はないものの、まとまらない思考と息切れのせいで内容がぶつ切りになってしまった。
応答はなかった。
不満交じりの怒りを覚えたヘクター・アブラム医師は観察室へ飛び込んだ。だが作業台は空っぽだ。部屋は暗い。これから振ろうとしていた熱弁を聞く観客もいない。彼は透明のシールドの奥にあるステージを振り返り、目の前で展開されていく壮絶な事件と比較して自分がどんどん小さくなっていくように感じた。
研究室の装置が被験体を拘束している。ベルベットの手袋などはなく、レアメタルが似たような複雑な形状で巻き付けられている。エクソの身体はぐったりとしていてピクピクと動く。人形使いの存在は感じるが、姿は見えない。
3度目、かつこれまでで最も強力なのエネルギーがコードを伝い、人形を震わせ、踊らせる。アブラム医師は手を口に当て、自然な流れでその手は目の方へと移る。
彼は指の隙間から、まるで魔法のように氷が人形のまわりに形成されるのを見て、人形使いの勝利を目の当たりにした。
「なぜこれが必要だったか、これで分かっただろう」
アブラム医師はクロビス・ブレイの発した言葉に驚き、振り向いた。彼の姿は全く見えていなかった。暗闇の中でゆったりと座っている。