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Lore
反抗的軍隊
与えられぬものは奪え。
渦嵐が地表を吹き渡り、突き刺すような霧が吐き出されて海岸線を覆う。通過する渦嵐は、郷地の大気から幾筋もの稲妻を掻き立てる。
生きた雲がシイ・ロに近づき、彼女はクリルの小さな身を縮めながら隠れて待った。雲はたれ下がる捕食用の触手を降下させる。その触手の先には光がある。その光は恐ろしい、疼くような幸福でシイ・ロの心を満たしていった。彼女の中で重くとどまるその感覚は、招かれざるものであるからこそ耐えることができた。
これで彼女は4つ目の「誘惑の光」を集めることになる。シイ・ロは次にヘリウム主が攻撃を仕掛けて来た時には、この誘惑の光を使って彼らを盲目にし、悶えるうちに切り刻んでやることを楽しみにしていた。
誘惑の光を切り離すには、可能な限り高く飛び上がらなければならない。触手は周囲の空気の流れを感じ取り、彼女に向き直る。少しでも遅れれば、触手は彼女の手から剣を奪い取るだろう。
だが彼女は素早かった。剣で光沢のある半透明な筋繊維を断ち、空いているほうの手で空中から誘惑の光を掴み取る。触手は身をよじって後退し、引き上げられるロープのように空へと昇っていく。
シイ・ロは高揚感を覚えた。そして振り返って初めて、そこにいる姉の存在に気付く。
両腕が力なく垂れ下がっているアウラッシュの足元には、巻物が散らばっている。シイ・ロは、姉の3つの眼が至福に満たされていることを見て取った。至福は渦嵐の武器である。
シイ・ロは姉に飛び掛かり、地面に押し倒す。
そして、2人は物陰の後ろで渦嵐が海岸線を進むのを待った。アウラッシュは不機嫌だが、シイ・ロは何をすべきか分かっていた。
「見ろ」シイ・ロが誘惑の光を差し出して言う。「これで至福は我々のものだ」
アウラッシュは縮み上がった触手の部分を掴んでそれを持ち上げ、小さな灯火であるかのようにその光を両手で包み込む。
シイ・ロはふざけた様子でアウラッシュを押して、光を落とそうとする。
だがアウラッシュは手放さなかった。