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ティンバル・ルシダ

エキゾチック / Ship

私は記憶を求めて幾度となく引き返してきた。

入手方法: 幻影のシーズンの勝利の道のり

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Lore

ティンバル・ルシダ

私は記憶を求めて幾度となく引き返してきた。

ザヴァラは真夜中に鼻歌を歌い、目が閉じてしまうのを防ごうとした。オフィスの窓は不透明なデジタル模様で染まり、司令官の顔がきらめく模様におおわれている。ザヴァラはエリス・モーンから届いた「迫りくる脅威」の見出しがついた長く濃密な報告書が表示されたデータパッドをいじった。

思わずため息が漏れる。同じような報告書を何度も読んできた。重要性は把握しているが、何度も行動を促されてきたことで焦燥感が薄れてしまった。

「タージ」ゴーストがこちらに注意を向ける。

「なんでしょう、ザヴァラ?」

「『環境音-SH9』を再生してくれるか?」

「わかりました」タージがうなずいた。しばらくすると、ゴーストは星空に浮かぶ松明の火を思わせるような穏やかな音を発した。やがてセミの鳴き声が聞こえてくる。ザヴァラはデータパッドを机の上に伏せて椅子に深く座った。重くのしかかる夜に、まぶたを閉じる。薄れゆく意識が、夢の中に紛れ込んでいく。

ザヴァラは野花の香りを嗅いだ。炎の中でくすぶる薪が空気を暖める。完璧な、飽きの来ない日常。はちみつ入りの紅茶が置いてあり、サフィヤの書物のぼんやりとしたバニラムスクの香りがする。彼の横にはサフィヤがいた。生き生きとしていて、本に没頭している。彼は彼女が思いにふける姿を見るのが一番好きだった。

編み針が音を立て、間に糸が織り込まれていく。彼の手は無心に動く。目の前には夕闇が広がっていた。息子の幼いシルエットが紫色の空に浮かび上がる。セミの鳴き声が辺りに響き渡る。幼子として草原を歩いていたハキムは、やがて少年となって駆け回り、ロトスコープを見るようにあっという間に思春期を過ぎた。父親の前に立ったときには、ほとんど一人前の男になっていた。ザヴァラはそんな息子の姿を見て、まるで信じられないものを見ているかのように誇らしげに笑った。

ハキムが手招きする。ザヴァラは編み針を置き、立ち上がった。彼はサフィヤのほうへ振り返り、彼女にキスをした。二人は息子を追って草原に入っていく。歩みを進めるうちに、きらめく夜空に徐々に明るさが戻り、静謐な空気の中でセミが鳴き続けていた。

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