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黄昏の旅人
不明瞭な道を辿る。
「目撃者にたどり着く道はすぐそこにある。リベンの取引がいかなる結末をもたらすかは分からないが、我々ふたりがその道を渡ることはないだろう」
放浪者はエリスの話を黙って聞いた。彼女の声は張り詰めていた。その目を覆う包帯の下からは、ドロドロとした黒い何かが流れている。
「自分にとって身近な者が忘却の彼方へと向かう様を私はただ見ることしかできない」エリスは両手を膝の上で落ち着きなく動かしながら言った。「イコラ。マラ。これほど自分の無力さを感じたことはない」
彼女は口を固く閉じたまま、放浪者を見る。話し始めたその口からは、荒い息が漏れた。「まただ。最後に我々は孤立する」
放浪者は一瞬の沈黙を破り、立ち上がった。そんな彼の様子をエリスは不思議そうに見ていた。放浪者は手を伸ばすと、エリスの手を取った。そして無言の促しに応えて立ち上がった彼女に腕を回した。
エリスが身構えたため、放浪者は不安を覚え、離れようとした。だがその瞬間、彼女は両腕を回し、必死に彼にしがみついた。彼が話し出すと、その胸から言葉が響く。
「あんたが話したことは覚えている。それについて、最近、必要以上に考えてしまう」
「私が何を話した?」
「避けられないのならば、闇の中で生きていく、と。その先にある未来のために」
エリスは頷き、ため息をつく。ふたりは離れたが、放浪者は彼女に安堵感を与えるようにその腕に手を添えていた。
「お前は最後の瞬間にここにいることを望むと?」彼女は慎重に告げた。
「他のどこでもない」
「もう太陽系を離れる気はないのか?」
彼はしばらく黙っていたが、首を振ってにやりと笑った。「ないな」彼はそう言って、彼女の目を見つめた。「月明かりが恋しくなるだろう」